妊娠しても流産や死産を繰り返す「不育症」。
この「不育症」に対して、新たな助成金制度が2021年春に創設されると発表されました。
政府は30日、妊娠しても流産や死産を繰り返す「不育症」への対策として、新たな助成金制度を来春にも創設すると発表した。
わかっていることについてまとめました。
不育症とは
不育症とは、流産・死産・新生児死亡が続いてしまい、「妊娠はするけれど、子供を授かることができない状態」です。
繰り返す流産は身体的・精神的な負担になります。
厚労省不育症研究班は、次のように定義しています。
不育症の定義として、流産を2回以上とするか3回以上とするかは議論のあるところですが、厚労省不育症研究班は2回流産を繰り返した場合には検査を開始することを提唱しています。
出典:厚労省不育症研究班
また、産婦人科医の重見大介先生は次のように解説しています。
二回の連続した流産を反復流産、三回以上連続すると習慣流産や不育症と呼ばれます。
一般的に初期の流産は全妊娠の15%程度で起きるので、決して珍しいものではありません。
二回連続では2-3%の確率です。これも、誰にでも偶然に起こり得るくらいの頻度と言えます。
ただ3回以上となると、頻度としては1%以下になるので、何らかの原因があるのではないかと考え、精密検査をすることが勧められます。
不育症の助成金制度はいつからで対象と申請方法は?
保険が使える検査を除いて、不育症の検査や治療で、国が支援制度をつくるのは初めてです。
時期 | 2021年春に創設予定 |
支援対象 | 保険対象の検査と一緒に「保険外併用」の検査を受けた人 |
支給額 | 1件当たり上限5万円 |
見込み | 年間約3万件 |
予算総額 | 十数億円 |
助成した自治体に対して、国が費用の一定部分を補助することが予定されています。
自治体の助成額の半分を国が負担する方向で調整中です。
ですから、申請は住んでいる地域の自治体に申請する形になるでしょう。
不育症の検査
助成金の対象とされる不育症の検査は、流産の原因の一つとなる胎児の染色体異常など、公的医療保険の対象となっていない一部検査のうち「先進医療」として実施されるものについて、支給されます。
先進医療とは、自由診療と保険診療を併用する「混合診療」の一つです。
自治体が費用助成する場合に国が一定額を補助する形です。
ただ、現在でも地方自治体の支援制度により、不育症検査または治療にかかる費用の助成を受けられる場合があります。
詳しくは以下をご覧ください。
不育症の人はどれくらいいるの?
不育症の人は、毎年数万人が発症していると言われています。
厚労省調査では、毎年約3万人が発症しているとの推計があります。
出典:JIJI.COM
ただ厚労省不育症研究班は次のように説明しています。
正確な数字は明らかではありません。
厚生労働科学研究班(齋藤班)の名古屋市立大学の検討では、妊娠を経験した女性の中で3回以上の流産の経験のある方は0.9%、2回以上の流産の経験のある方は4.2%でした。
日本では正確な数は判りませんが、毎年妊娠される方のうち、数万人が不育症の可能性があります。
いずれにしても不育症は、決してめずらしいものではありません。
出典:厚労省不育症研究班
不育症の原因は?
不育症の原因は様々ですが、主な原因に次のようなものがあげられます。
- 子宮形態異常
- 夫婦の染色体異常
- 血液凝固因子の異常
- 内分泌異常
- ストレス
不育症の治療方法
厚労省不育症研究班は次のように説明しています。
内科疾患や甲状腺ホルモン分泌異常が見つかった場合、治療を行います。
第XII因子欠乏症やプロテインS欠乏症や抗リン脂質抗体症候群では、抗血栓療法(アスピリン内服やヘパリン注射)を行う場合もあります。
リスク因子不明不育症に対しては、積極的な治療をしない経過観察で比較的良好な結果が得られています。
治療した症例、経過観察の症例をふくめて、不育症外来を受診した方は、最終的に約70%以上が出産に至ると報告されています。
不育症は克服できる?
精神的にも経済的にもつらい不育症。
精神サポートも大切であると言われています。
同じ悩みを経験し乗り越えた仲間が相談に乗る「ピア(仲間)サポート」と呼ばれる活動の促進といった相談態勢強化も柱に据えた。
出典:毎日新聞
不育症の助成金制度に対する世間の反応
不育症の方への助成金制度について、世間でも関心が集まっています。
私は不育症のため不妊治療を諦めて特別養子縁組で子どもを授かりました。私の場合、効率よく流産せずに出産するには体外受精で着床前検査をすることでした。着床前検査をして不妊治療をしても現実的には出産に至るのが難しいのが現実です。もちろん不育症に助成するのは賛成です。お金も精神的なストレスも多大でしたから。
私も所謂不育症でした。
未だに3人分のエコー写真を捨てられません。私のせいでお腹の中で育ててあげれなくてごめんね…。という気持ちを一生抱えて生きていきます。医学は日進月歩。20代でも不育症の女性は居ます。お母さんになりたい若い世代が安心してお母さんになれ、産まれた子供達が幸せになれるような医療や世の中になって貰いたいです。
子供が欲しくても何度も流産する、した気持ちは、経験者じゃなければ本当の辛さは理解出来ないと思います。気持ちも体も空っぽになるあの感覚。一人でも多くの妊娠出産を希望する女性や胎児を救って貰いたい気持ちです。
不妊治療、不育症治療に力を入れるのはいいことだけど、出産を保険適用にしないのはむしろなぜ?
不育症は5%くらい発生すると言われており、タブー視されているから一般的に認識されないが、意外と多い「病気」。流産の経験だけでいったら15%くらい経験するらしい。
これは少子化対策ではない、ある種の病気なんだから、保険適応は妥当
ようやく不育症にも光が当たった。
今年までは、不育症はまだ発展途上で治療として科学的根拠に乏しいとか言われ相手にされなかった分野。
発展途上だとしても結果子どもを産む事ができた人はたくさんいる。
保険が効かず高額な治療や検査も多く、また不妊治療と並行して行っている事も少なくないため、助成金が出る事は本当に大きいと思う。
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